写真展『Papa, You’re Crazy』
August 19, 20259月11日(木)より福岡県大牟田市にあるin the past™︎にて、写真展『パパ・ユーア クレイジー』を開催します。また会期にあわせて発表する写真集『Papa, You’re Crazy 〈クジラと天体、父の島〉』も現在制作中です。こちらもこの機会にぜひ手にとってもらえると嬉しいです。
本作では、アメリカの作家ウィリアム・サローヤンが1957年に発表した小説『Papa, You’re Crazy』を題材に、僕と僕の父が長崎県の平戸にある島で過ごした夏の日々を捉えています。海辺で見つけた貝殻について、じっくりと観察しあれこれ議論を重ねたり、独自の料理を開発したり、あざらしの暮らしぶりに思いを馳せたり。サローヤンの書いたこの小説には、この世界を生きていくことへの深い洞察が、父と子の他愛もない会話の中にいくつも散りばめられています。「あるものが見つかるはずだと思い続けることは、実際に見つけることと同じくらいにいいものなんだ。」父親が息子ピートに世界を理解することについて話した言葉です。それはそのまま今の僕自身にもしっかりと届く言葉として深いところに突き刺さり、同時に優しく背中を押してくれるような気もします。こうした父と子との愛らしく軽やかな対話を、僕が僕の父と交わすことはとても難しいけれど、写真を介することで自分なりの父との交流を試みることはできるかもしれない。そうした思いと着想がこの作品の根底にあります。家族という存在は、ある種とても複雑な関係性のもとに成り立っていて、ひとことで折り合いをつけることは難しいものだと僕は思うのですが、この小説を読むたびに体験する眼差しの転換によって、今まで持ったことのなかった自分の感情に触れることができたような気がします。この作品を通して、見る人にとってもなにか感情の揺らぎのようなものが起こることを期待しています。ぜひ会場にお越しください。会場のin the past™︎では、この展示用にZINEを制作してくださっています。またこの本に出てくる「ホットドッグ」をオリジナルで作るように試作中とのことです。お楽しみに!
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papa you’re crazy
isao nishiyama photo exhibition
西山勲 写真展『パパ、ユーア クレイジー』
◉会期=2025年9月11日(木)〜10月5日(日) 12時〜18時
◉休廊=毎週水曜日
◉ところ=in the past™(大牟田市本町1-2-19 中原ビル1F)
◉作家在廊=インスタグラムにてお知らせします。
本展示会開催の背景
『パパ・ユーア クレイジー』は、1957年にアメリカの作家ウィリアム・サローヤンが発表した父と息子との厳しくも爽やかな交流を描いた小説です。その本を僕は約十年前、西山くんにプレゼントしました。彼が自身のビジュアル誌『Studio Journal Knock』を出版するために、約2年をかけ世界十数カ国を取材撮影する旅に出る前に渡したのです(実を言うと、僕は、この企画が持ち上がるまで、彼に本をプレゼントしたことをすっかり忘れていました…)。昨年、彼に展示のオファーをした時、西山くんはここ(in the past™)で展示をするなら撮り下ろしでやりたい、僕らが大好きな小説『パパ・ユーア クレイジー』を下敷きにやりたい!と言いました。西山くんは、今年の夏、彼の父親を撮るために愛用のフィルムカメラをを携えて、長崎県は平戸の海辺にある父の家へ何度も通いました。これは西山くんと彼の父親との静かな一夏の物語を綴った写真展です。西山勲の「パパ・ユーア クレイジー」をどうぞ、in the past™にてご覧ください。
西山勲 にしやま いさお ●1977年生まれ。福岡を拠点に活動する写真家。2013年に世界のアーティストの日常をドキュメントするビジュアル誌『Studio Journal knock』を創刊。旅をしながら世界各地のアーティストを取材し、編集・制作・発行まで行う。主な仕事として、雑誌『TRANSIT』の撮影・執筆、映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017)、ドキュメンタリー『人と仕事』(2021)、NHKスペシャルドラマ『海の見える理髪店」(2022)、短編「冬子の夏」、映画「愛に乱暴」(2023)のスチール撮影、くるり『宝探し』ジャケットなど。写真集『Secret Rituals』(2021)、『宝探し』(2023)、『スプリング・ロール』(2024)、『LOVE SOME STORY』(2025)。
●ウィリアム・サローヤン 著
『パパ・ユーアクレイジー』とは
マリブの海辺にある父の家で、僕と父の新しい生活が始まった。父は僕に、僕自身について小説を書くように言った。僕は海を、月を、太陽を、船を知ってはいるけれど、僕自身や世界をほんとうに理解するにはどうすればいいんだろう?……10歳になったばかりの少年ピートは父親との時に厳しく、時にさわやかな会話を通じて、生きることの意味を学んでゆく。W・サローヤンが息子に捧げた心あたたまる小説。(ウィリアム・サローヤン 著 / 伊丹十三 翻訳、出版社/ 新潮社)